オフィちゅラブ

オフィちゅラブ4

そう思って軽くため息をついて前から2両目の列に並んだ。香那紀は電車の中で読もうと思っていた経済新聞をだして読みたい箇所のみ読めるように小さく折りたたんで読み始める。毎日の日課である。まあ、これに関しては暇がないというより、香那紀の男っぽくりりしすぎる気質が災いして、結構な美人でスタイルも見栄えもいいはずなのにもかかわらず、男友達はたくさんいても男以上に男らしいところが彼女に敬遠されてきたのだ。その辺は会社には同じで、本人も自覚していた。混雑する中、なんとか2本目の電車に滑り込んだ香那紀は、もちろん立ちではあるが、新聞を読むスペースを確保してほっとする。他人事のように心でそうつぶやくと興味なさげに他の記事に目を通す。
17:00の定時で急に人口が少なくなるのが簡単に予測できた。香那紀はと言えば、いつも仕事三昧でクリスマスにきまって急な仕事が回ってきて、有無を言わさず深夜までの仕事になる。入社したての頃はなんでクリスマスに私だけ・・・?とよく嘆いたものだが、毎年となるとさすがに諦めの境地である。それでも、世間がクリスマスモードで盛り上がってくると一抹の寂しさやむなしさは感じていた。
やりがいだってそれなりに感じる。認めてもらえるとうれしいし、それでそれなりに昇格もしてビジネスライフとしては申し分ないように思う。
ふと、後ろから聞きなれた声で威勢よく呼び止められる。
身長は170ちょっとであまり大きくはないが、人懐っこそうな笑顔で愛想がいいこともあり社内でもまずまず人気のイケメンである。笹本はデスクも隣同士で、昼食も一緒にとったり、雑談もよくするなど結構仲がいい。年下をからかうような雰囲気で香那紀が声をかける。
「えっ?そうですか?ははは・・・やばいな。」「なんかいいことあったのね、その顔だと。」「ええ、その・・・、アタックし続けていた人に昨日OKもらえたんですよ。」笹本は照れくさそうに、真っ赤な顔してうれしそうに言った。
口に人差し指を当る。
posted by オフィちゅラブ ◇ at 17:05 | Comment(0) | TrackBack(1) | 日記

オフィちゅラブ3

朝のラッシュの中、麻生香那紀(あそうかなき)は重い体をひきずりつつ、小走りに駅のホームへと向かっていた。香那紀は朝が苦手だった。人の塊が物のように電車に押し込まれる通勤ラッシュが苦手だからではない。会社にはいって8年もたつと仕事が膨らみ、ここ数年は深夜まで残業が続き、0時を過ぎて最終電車で帰り、朝はいつもの時間に出勤という日が続くことも多い。慢性的な睡眠不足と過労で重い体とボケボケの頭とお付き合いしているがゆえ、朝が苦手なのである。香那紀は定期のカードを自動改札に通し、ホームの人ごみに混ざる。
ため息をついて前から2両目の列に並んだ。
香那紀は電車の中で読もうと思って読みたい箇所のみ読めるように小さく折りたたんで読み始める。毎日の日課である。これに関しては暇がないというより、香那紀の男っぽくりりしすぎる気質が災いして、結構な美人でスタイルもかなり見栄えもいいはずなのにもかかわらず、男友達はたくさんいても男以上に男らしいところが彼女に敬遠されてきたのだ。その辺は会社には同じで、本人も自覚していた。混雑する中、なんとか2本目の電車に滑り込んだ香那紀は、もちろん立ちではあるが、新聞を読むスペースを確保してほっとする。他人事のように心でそうつぶやくと興味なさげに他の記事に目を通す。
今日はクリスマス前の金曜日である。定時で急に人口が少なくなるのが簡単に予測できた。仕事三昧でクリスマスにきまって急な仕事が回ってきて、有無を言わさず深夜までの仕事になる。入社したての頃はクリスマスに私だけ・・・?とよく嘆いたものだが、毎年となるとさすがに諦めの境地である。世間がクリスマスモードで盛り上がってくると一抹の寂しさやむなしさは感じていた。
それなりに感じる。それなりに昇格もしてビジネスライフとしては申し分ないように思う。
後ろから聞きなれた声で威勢よく呼び止められる。
posted by オフィちゅラブ ◇ at 17:02 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

オフィスラブ1

このエリアの一等地に立つビルのオフィススペースには企業が名を連ねている。
メインオフィスは窓が占め、景色は、遠くまで高層ビルが連なる都会のビルの群集で、映画やドラマでみるような大都会のビジネス街そのものだった。
窓から見える景色は、灯りやネオンが美しい大都会の夜景へと変わっている。ヘルス&ビューティ関連商材のメーカーが持つ販社である。
スーパーチェーンで、これらの店は開店が営業時間が長い。昼間は人口が少なく、電話の音や話し声、FAX、PC、コピー機など音がすみずみにまで響き渡るほど静かな空間と化す。日が暮れて活気を取り戻してくるのが日常だった。リズミカルに書類の束に目を通していた時、その知的でやや広めの額を微妙に動かし、眉間にしわを寄せた。

「名村です。今よろしいですか。」
彰子は無表情に淡々と事務的に話を始める。

「昨日提出された経費清算書の件ですけど、これは何を購入されたんでしょうか。明細がないと清算できませんが。事務費といっても用途が広いんですよ。加村さん、何度目でしょうか。・・・はい、・・・はい・・・、清算画面の備考欄ありますよね、そこに内容を記入してください。わかります?・・・。」
彰子は受話器を肩にはさみながら、書類を目を通していく。

「・・・えっ?」
彰子がこめかみをピクっと動かして意志の強さがあらわれているような切れ長で形のいい目を見開いた。
知的で美しい顔に微笑みがなくなるとひどく凄みを増す。
「ちょっと、それじゃあ、費用項目違うじゃないですか!加村さん、何回目だと思ってるんですか。なんでも事務費で請求しないでください!それだったら、調査費でしょう?加村さん、もう一回費用項目のマニュアル見て正確に請求してください。今度やったら、支払いしませんよ!」
啖呵を切ると受話器を置かずに荒っぽく右手を伸ばして回線を切ると、すごいスピードで内線番号をまわす。
彰子の目が鋭く光って厳しく書類を睨んだかと思うと、声を荒げた。
posted by オフィちゅラブ ◇ at 17:01 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記

オフィちゅラブ2

田端はビクッとする。田端は新人で、彰子が直接の上長となり、仕事内容を教わっている。感じで苦笑いしておずおず彰子に問いかける。

「ええ、何回言えばわかるのかしら。こっちも忙しいんだから、手を煩わせないで欲しいわよね。」
「いっそ、そのまま、本社の経理に送ってしまってはいけないのですか?」
「そうね。でも、そうすると本人だけでなく承認した人の責任にもなるのよ。それに加村さんの場合、今日みたいな簡単な内容じゃないときが多々あるのよ。」
彰子はため息まじりで苦笑すると田端も頷いて合わせた。
彰子の傍から急に聞きなれ声が割り込む。

「一之瀬お帰り。今日早いじゃない。」
彰子が横に立つ背高なホープ、一之瀬航(いちのせわたる)が愛想のいい笑顔を浮かべて傍に立っていた。
スタイルも抜群で美麗な顔立ちという容貌も手伝って、女性にも絶大な人気を誇っていた。彰子は会社の中で唯一この青年だけを呼び捨てにする。
彰子に懐いてきて、面倒を見るようになって現在に至るのだ。
「ええ、今日は週末ですからね、早めに切り上げようかと思って、昨日の晩に仕事詰めたんですよ。」
「へえ。ちょっとは成長してるじゃない。あ・・・、もしかしてデートなの?」
彰子がニヤニヤして聞くと一之瀬は脱力して苦笑いする。
彰子はクスクス笑いながらPCの画面に向き直った。
posted by オフィちゅラブ ◇ at 17:00 | Comment(0) | TrackBack(0) | 日記